7つの視点

●「反貧困学習」の7つの視点とは
1.自らの生活を「意識化」する
 生徒一人ひとりが自らの生活を社会状況と重ね合わせながら省察することによって、自分たちが「いま、ここにあること」の意味を理解する。そして、その社会状況に対して批判的に立ち向かい、変革の主体として自らを自覚することを「意識化」と考えている。この「意識化」の過程を経ない「反貧困学習」は、他人事しての知識の獲得や未来への諦観しかもたらさない。
また、この「意識化」は個々の生徒の内側に起こるのではなく、生徒と生徒、生徒と教師の間に起こるものだと考えている。
2.現代的な貧困を生み出している社会構造に気づく
 日本において現代的な貧困は、グローバル化した世界経済の下で、「バブル崩壊」以降になされた「新自由主義」に基づく施策によって顕在化したと考えている。全労働者の3分の1が非正規労働者となり、ワーキングプアとして社会問題化したが、中でも女性と子どもの貧困が際立っている。「反貧困学習」では、生徒一人ひとりの生活の中に見られる個別的な貧困が社会的な排除の構造の中で生みだされたことに気づくことが求められる。
3.「西成学習」を通して、差別と貧困との関係に気づく
 近年、貧困が「再発見」されているが、日本にはずっと貧困問題があり、西成にはそれらが集積され累積されてきた。それらの背景には部落差別があり、民族差別があり、そして寄せ場差別があった。しかし、だからこそ西成には差別と貧困からの解放への闘いの歴史があり、その歴史はこの土地に刻み込まれている。これらを学ぶことは、現代的な貧困を歴史的な視座で捉えることができるようになるだけでなく、自らとそしてこの社会をどう解放していけるのか考える契機となると考えている。
4.現在ある社会保障制度についての理解を深める
 これまで日本社会(国家・企業・地域・家族)が張ってきたセーフティーネットは既に綻び始めている。今後、新たなネットを構築していくことが求められているが、生徒の直近の事態の解決に向けては現在ある社会保障制度の活用に頼るしかない。「申請主義」的な性格の強い日本の社会保障制度について、生徒とともに理解を深めることが、生徒の生活保障に向けて「学校」に求められている緊急の課題であると考えている。
5.非正規雇用労働者の権利に気づく
 若者の半分が非正規労働者である現状において、正規雇用に就くことこそが「格差の連鎖を断つ」と教えることは既に非現実的であるばかりでなく、正規労働に就けなかった者に「自己責任」論を内面化させる虞がある。貧困の温床となるなっている派遣労働の問題を明確にするとともに、すべての労働者に適応される労働基準法を非正規労働者(アルバイトをしている高校生も含めて)が権利の盾として学び、各現場でそれを遵法させていく実践を足下から積み上げていくことが重要だと考えている。
6.究極の貧困である野宿問題を通して生徒集団の育成をはかる
  「貧困」を被差別の実態、あるいは結果として捉えると「差別」が主題となり、貧困は副次的に位置づけられてしまう。貧困そのものを主題とすることによって、究極の貧困である野宿問題は私たちが向き合うべき最も大きな人権課題として立ち現れる。「反貧困」を結集軸として生徒集団を育成するなら、野宿問題への取り組みは欠かせないと考えている。
7.「新たな社会像」を描き、その社会を創造するための主体を形成する 
 「反貧困学習」が最終的に目指していることは、現実の単なる否認ではなく、貧困を生み出さない「新たな社会」を創造し、その実現のために現実に対して働きかけていく主体を形成していくことである。そのためには、諸外国の制度や地域的な実践についての学習や市民としての社会参加や政治参加についての学習も進める必要があると考えている。

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