ワーキングプアになるなとか言うな!

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 「自立生活サポートセンター・もやい(http://www.moyai.net)」の事務局長・湯浅誠さんの講演を聴いた。湯浅さんは、本屋でも平積みされている岩波新書「反貧困」の著者である。講演に先立ち、二人で話をする時間をもてた。日本にどんな社会保障があり、どうアクセスすればよいかや労働基準法に違反する事例にであったときにどうすればいいかなどを、「学習指導要領」に載せてすべての学校で教えるようにすればいいという話で盛り上がった。「学習指導要領」の存在や法的拘束力には大きな疑問を感じるが、「学校」という枠の中でこの時代にできるとても重要な役割だということでは共感を覚えた。また、もやいの活動も紹介されている「ワーキングプアⅢ」を教材化した話もした。あの番組は玄人受けはしたが、批判も多かったという。実際に貧困の現場で人と出会い、関わることの困難さと重要さを表現した番組であったと思う。後日、このブログにもアップする。

 講演では実際にもやいに生活相談に来る人々の生の声から日本社会の社会構造を見事に描き出していた。それまで生活相談に来たのは日雇い労働者をしていたが働けなくなった人やDVを受けた母子世帯が中心であったのが、3・4年前から若者や一般世帯が相談にくるようになった。現在では月100人のうち半分は若者になっている。若者に共通することは生活が苦しくなっても役所に相談しようとしないことだ。どこにも相談せずに、所持金が何十円となって「もやい」に相談にくる。とにかく生活を建て直すために「生活保護」をとるように勧めるが、本人たちはそれをなかなか受け入れようとはしない。社会が人に迷惑をかけずに、前向きに生きていくというメッセージをずっと出しているからだ。このままではどうにもならないことを本人に気づいてもらうことから「もやい」は始めている。
 また、「貧困」状態の特徴は多重債務の問題・虐待の問題・不当な労働環境など、問題が複合的なことが特徴だ。だから、どこにいけば問題解決のための相談を受けれるかの情報提供をするプチコーディネーターが必要だ。本来この役割を果たすべき福祉事務所は抱えている件数が多すぎて限界にきている。たまたまでも出会った人、学校なら教師がこの役割を担う必要がある。
 現在失業中の10人中8人が失業保険をもらっていない。政策的にもらえないようにしたからだ。労働市場の外のネットがなければ、労働市場が切り下がるのは当然だ。結果的に過酷な労働環境にもNOと言えない労働者が増えている。そしてNOと言えない消費者・市民が問題だ。このような状況の中で、世の中の条件を変えずに、ワーキングプアになるなとか言わないで欲しい。

 貧困の側から見ると、この社会の全体像がよく見える。これほどの活動をしている「もやい」がスタッフの給料もでないほどの資金難だそうだ。経験上、一時的なカンパよりも会員となって団体を継続的に支援するほうがいいと思う。
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